イマージン
(心に思い描いてごらんよ)

−ビートルズを聴く−

 

 ビートルズをCDで聴きました。何を今頃と思うひともいる

でしょうけれども、まともに聴いたのは今度が初めてです。思

ったよりずっと地味だなという感じを受けました。ビートルズ

の評判は、もちろん若い頃からずっと聞いています。リーダー

のジョン・レノンがピストルで打たれて死んだりして、それで

も人気が衰えず、最近では、この世にいないレノンと他の仲間

との合成演奏のCDが出たとか、後に残された妻のオノ・ヨー

コはますます元気で活躍しているとか、黙っていてもいろいろ

なことが耳に入ってきます。今年大学に入った姪っ子は、仲間

と一緒にライブとかで、ギターを抱えて  ビートルズを歌って

いるといったうわさも聞こえてきます。



 「<イマージン>はいいですよ」とわざわざCDを持ってき

てくれる人がいて、とうとう意識して聴くことになったわけで

す。正直なところモーツァルトの方がやっぱりいいなといった

見当違いな感想を持ちました。興味を引かれたのは、歌詞です。

たとえば、「リボリューション(革命)」。

革命が必要だって?

いいかい聞いてくれよ

そりゃ誰だってこの社会を変えたいさ・

革命は発展につながるって?

そりゃ、そのとおりかも知れない

誰だって住みよい社会を築きたいのさ

だけど、物事すべてを破壊しようって考えには

とても賛成できないね・・・

憎しみのゆえに運動を起こす人たちのために

寄付金を集めるというなら

アンタたちに、ただ一言こう言いたい

”兄弟よ、時期を待て”と・・・

いいかい、世の中は少しずつだけど

いい方向に向かっているんだよ・・・


 ビートルズはすばらしいといいますが、みんなは、何をすば

らしいと言っているのだろうか。こんど姪っ子に会ったら、そ

のことを聞いてみようと思います。



 「イマージン」には、多少違うリハーサル版と本番版の二つ

の詩があるようだ。リハーサル版は、ミュージシャンたちを中

に呼び込むリハーサルでの生の声が入っていて、それから歌が

始まる。

想像してごらん(心に思い描いてごらん)、

天国なんてないんだと・・・

その気になれば簡単なことさ

僕らの足下に地獄はなく

頭上にはただ空があるだけ

想像してごらん、すべての人々が

世界を分かち合っていると・・・

僕を空想家だと思うかも知れない

だけど、僕ひとりじゃないはずさ

いつの日か、きみも僕らに加われば

この世界は一つに結ばれるんだ




こう歌った後で、「うーん、いい歌だ」「いや、ほんとだ」

「僕がいちばん好きなやつなんだ」という会話が入る。



 「イマージン」の本番版の方も少し長くなるけれども

紹介しましょう。



想像してごらん、

天国なんてないんだと・・・

その気になれば簡単なことさ

僕らの足下に地獄はなく

頭上にはただ空があるだけ

想像してごらん、すべての人々が

今日のために生きていると・・・

想像してごらん、国境なんてないんだと・・・

そんなに難しいことじゃない

殺したり死んだりする理由もなく

宗教さえもない

想像してごらん、すべての人々が

平和な暮らしを送っていると・・・

僕を空想家だと思うかも知れない

だけど、僕ひとりじゃないはずさ

いつの日か、きみも僕らに加われば

この世界は一つに結ばれるんだ

想像してごらん、所有するものなんか何もないと・・・

果たしてきみにできるかな

欲ばりや飢えの必要もなく

人はみな兄弟なのさ

想像してごらん、すべての人々が

世界を分かち合っていると・・・

 この文章を、ビートルズのCDをききなが打っているわけ

ですけれども、何か礼拝の気分がしてきました。ビートルズ

は、まさにキリスト教世界から生まれた音楽であるに違いな

いと、−もうさんざん論じ尽くされたに違いないビートルズ

論を何も知らないで言うのもおこがましいことですけれども、

−確信させられます。ちょうどマルキシズムが、キリスト教

を抜きにして考えることができないのと同じです。つまり、

ビートルズは、欧米のキリスト教に幻滅を感じ愛想を尽かし

たところから始まっている。それが、わたしの受けた印象で

す。「ゴッド(神)」という歌では、神などただの観念(概

念)に過ぎない。聖書も神も信じない。信じられるのは、自

分とヨーコだけだ。それだけが現実だ、と歌っています。反

宗教、反信仰と単純に排除してしまうことのできない素朴な

真実がそこにあるように思います。



 ボスニア・ヘルツェゴビナやパレスティナや北アイルラン

ドの状況を見ながら、教会とは何か、宗教とは何かというこ

とをあらためて問い直さなければならない。そういったとこ

ろにこの時代は来ていると思います。ビートルズが何に絶望

し何を捨てようとしたのかを、わたしたちは自らに問うて見

なければならないような気がします。ビートルズが世界を救

うとは思いません。マルクス主義が結局世界を救うことがで

きなかったように、ビートルズも世界を救うことはないでし

ょう。しかし、マルクス主義やビートルズが欧米のキリスト

教文化に向けて投げかけた問題は、教会が真剣にしっかりと

受け止めなければならないものではないかと思います。ビー

トルズが、素朴な感性を前面に出して訴えている事がらの中

に、もしかしたら教会の再生への道のヒントが隠されている

のかも知れないと、いま八月の終わりに考えているところで

す。(96年夏)




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